ライナーノーツ

僕が「the band apart」と出会ったのは5年ぐらい前のことだろうか。
その頃の彼らは決して有名なバンドでもなくて、
ちょっとお洒落なロックバンドという印象しか無かった。
残念ながら今の日本の音楽シーンは僕が見る限りかつての勢いが無くて、
そんな時期に登場した彼らも飽和した音楽業界の流行り物に過ぎないと色めがねで見ていた。


ところが、彼らの勢いは僕の邪険な想像をいとも簡単に打ち砕いてくれた。
fool proof、Eric.Wと立て続けに出したシングルは、
ポップス、パンク、ロックなどの枠組みにとらわれない彼らのスタイルを鮮明化し、
1stアルバム「K.AND HIS BIKE」に至っては、
彼らの存在を音楽シーンに確固たるものとして位置づけることを余儀なくした。


それから数年をかけて彼らは次々と曲を打ち出し、
そのどれもがリスナーの期待をいい意味で裏切る作品となっている。
そして、満を持して発表された4作目のアルバム「Adze of penguin」。
実を言うと僕には一抹の不安があった。
この手のバンドって、
どこかで音楽性が偏ってつまらなくなることがよくあるのだ。
彼らはややプログレ志向だったから、
もしかしたらプログレ一辺倒になってしまうのではないか。


心配は完全に取り越し苦労だった。
彼らの音楽性は偏るどころか広がる一方なのだ。
プログレッシブなenter、Fallingで始まり、
ポップなCosmic Shoesが中締め
アコギを使うなどの新しい取り組みが見えるbacon and eggs。
そしてファンクの要素が垣間見えるWaitingがトリを飾る。
もはや非の付け所が無いとはこのことだ。


僕のように懐疑的なリスナーは彼らによっていつも裏切られ、
その都度彼らに、より一層惚れ込んでいくのだ。
彼らは自分たちの歩く道を切り開いて行き、
僕らその後ろを付いていく。
それだけで日本の音楽シーンは明るくなるかもしれない、
そんな考えを持っているのは僕だけではないはず。


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洋楽の日本版CDに付いているライナーノーツ風に書いてみました。
mixiに書いたものですが、
久々に会心の文章だと思ったのでこちらにも書いてしまいました。
それはさておき、バンアパの4thアルバムはめっさお勧めです。
相変わらず一般受けはしないかもしれませんが、
随所に新しい取り組みが見受けられて、
似通った他のバンドには真似できない独自性が見え隠れしてます。
やー、これは16日のライブも楽しみです。